
元世界J・ライト級チャンピオンの沼田義明さんは今年4月19日に傘寿(80歳)を迎えるが、いまも東京清瀬市にある沼田ボクシングジムの会長として、元気に毎日ジムで後進の指導に当たっている。
沼田ジムは1986年に設立。長らく日本プロボクシング協会の加盟ジムだったが、数年前に退会した後もフリーのジムとして活動を続けている。沼田会長は一時体調を崩したことがあったものの、いまは健康を回復。会長を慕う熱心な会員たちのサポートも得ながらジムの運営を続けている。
12月のある日、ジムに珍客が訪れた。元WBO世界S・バンタム級王者のダニエル・ローマン(米国=34歳)で、8年前(2017年月)に大阪で久保隼(真正)を破り世界王座を獲得し、初防衛戦では松本亮(大橋)の挑戦を3―0判定で撃退した選手。しかし後5度目の防衛戦でムロジョン・アフマドリエフ(ウズベキスタン)に判定負けして無冠に追われた。
最後の試合は2年前にスティーブン・フルトンのWBC・WBO王座に挑んで判定負けしたもの。フルトンはこの次の試合が井上尚弥戦だったから、もしフルトンに勝っていればローマンが井上と対戦したかもしれないのだ。
実はローマンは恋人と一緒に来日し、1ヵ月ほど日本に滞在して観光旅行を楽しんでいた。沼田ジムの会員と親交があったことからこの日練習にやってきたものだ。関係者によるとローマンは日本で再起のプランもあるという。ただ長いブランクの影響は明らかで、動きに切れもなく見るからに緩慢だった。
見かねた沼田会長が即席指導を行う光景も見られた。あとでこの時のことを聞くと、「そんな選手とは知らなかったので、つい……何を教えたか忘れました」と沼田会長。「そういえば、自分と同じものを感じたのも確かですね」
ローマンは生まれも育ちもロサンゼルスだが、若き沼田会長が昔この地で世界のリングに立ったことがあるのを知っていたろうか。今から半世紀以上も前。スポーツアリーナで行われたWBC世界ライト級タイトルマッチでマンド・ラモスに挑んで最後は6回KO負けで玉砕したが、地元の人気王者に奮闘している。
沼田さんはチャンピオン会のメンバーの中でも、ファイティング原田や藤猛さんに次ぐ古参で、1960年代後期から70年代にかけて活躍した。「精密機械」と異称され、WBAとWBCの2団体で世界王座についた。
沼田会長とローマンの元世界王者が2人。
ローマンを教える沼田会長。
沼田ジムの会員たちと交流したローマン。